よくある地名の語源 「こ」

こうげ(コヲゲ・コウケ・コオゲ・高下・小受)【コウゲダバ(打井川)】〔小受谷(安田町瀬切)、高下(本山町吉延)、公下谷(須崎市浦ノ内今川内)、コヲゲ(四万十市井澤)、コヲゲ畝(大豊町西峰)、コヲゲ谷(香南市上分)ほか〕

 四国中国地方に分布する山間の焼畑地名。その他焼畑地名にはコバ、ソリ、ハリギなどがあり、山間地である高知県には多く分布する。

 

こうだ(神田)【若井川地区の集落】

 

こうだごう(神田郷)【中世の広域地名。概ね松葉川地域の北部一帯】 

 中世の仁井田庄が仁井田庄八郷八番と言われたころの八郷の一つ。米野川村、作夜村(今夜を屋の字に書)、壱斗俵村、中津川村の神田郷15名、南部郷と言われた。現在の松葉川地域の北部一帯で、川奥は長宗我部地検帳にも川記録はなく米野川村に含まれていたものと思われる。室町以前は大半未開の地であったが、奥州南部因幡守高忠という人が僧として諸国をめぐったのち一斗俵に止まり開拓を始めた。一斗俵の地名由来は南部氏の開拓によるもので応安3年(1370)のことといわれる。 

※「神田郷」の読みは、窪川町史にもなく、仮に「こうだごう」と呼んで五十音順に入れた。

奥州南部周防守高忠は旧窪川町史p26。窪川町史蹟と文化財p27は因幡守高忠とある。新窪川町史は、因幡守が6か所、周防守が4か所と記述のゆれが多い。また、因幡守が一斗俵に来往した年も応安2年、応安3年、建徳元年と3通り記述されてる。出典の違いもあろうが、注記が欲しいところだ。また、新窪川町史は各所に記載ミスもあるのでネットでの正誤表が必要であろう。

こうのの(神野々)【数神地区の集落・行政区】

 

ごをろ(ゴヲロ)【野々川井﨑コヲラバタ(日野地)ゴウロヲ(瀬里)小浦(大鶴津)

 谷合などの石の多い土地。転じてその小石のこともゴロ・ゴラともいう。ゴウラ・ガアラという地名とともに、全国に多い地名。農作業に適さない土地として命名したのだろう(民俗地名語彙辞典)。

 箱根の「強羅(ごうら)」や北アルプスの「野口五郎岳(昔はゴウロウ岳と呼ばれた)」も同じ意。沖縄では川の流れをゴウラと呼び、小石からなる浜も小浦と呼ぶ。川の流れがゴウゴウ、岩石がゴロゴロ、潮騒のコロコロというオノマトペからきた地名だろうか。

 地名の研究では柳田国男の影響が大きく、箱根の「強羅」を例にして岩石の露出している小地域と説明したことから、解釈のスクラムとなったのかもしれない。また、柳田國男は「土佐にはことにゴウロという地名が多い」と言及している。

 この土佐にゴウロが多いということから調べてみたら、原田英祐氏の『四国東南部 方言辞典』に「ごーろ=野根別役の小字名、ゴーロやゴロクは昔の林産物集積加工地に由来する地名」とある。記憶では、昔材を搬出する榑(くれ)の寸法が長さ二間×幅厚5・6寸が主要な規格だったことから、製材地などにこの地名が刻まれているという。ゴウロ・ゴウロク地名は東洋町野根のみならず安芸市僧津、香南市夜須町国光、香美市香北町岩改、香美市物部町神池、高知市鏡葛山、仁淀川町吉ヶ成、津野町芳生野、津野町北川、梼原町上西の川に小字がある。奈半利町のコゴロク廃寺跡の所在地が長宗我部地検帳に記録される古五六村ということから、高知県下には小字だけでなく微細地名として残っていることだろう。

 五来重は高良神社について

 

こえと(越ト)【各地】

 

こかい(小貝)【十川地区の集落】

 

 

こくぼかわ(小久保川)【東川角地区の集落・行政区。飛地】 

ここのかでん(九日田)【宮内、大正】 ※→参照「神の歳時記 神田のいろいろ」

 神戸市では七月の九日を仏に参る日。東京をはじめ多くの土地ではこの日を四萬六千日という。その日に参詣すればそれだけの日数参詣したことと同じという(綜合日本民俗語彙)。九月九日は菊の節句で、大道や古城ではお祭りする風習がある。それらの費用に充てるためにあてがった田が神田・仏供田としての九日田か。類似した地名(ホノギ・字)に正月田、五月田、七月田、七日田、彼岸田などがある。

こごめ(小籠)小籠山(天ノ川)/小籠(南国市)

 高知県方言辞典に「こごめ・漁村などの子供が、おはじきに使う小さな貝がら」とある。岡山県を原産地にする五輪塔石となる白色の粒状石灰岩。風化すると小米のようになることから命名されたという。高知の方言であるコゴメも小さな貝がらからきたものだろう。

 春、上高地の徳沢園に泊まったときの食事が「コゴミの天ぷら」。初めて見た羊歯のようなお化けゼンマイに驚いた。翌日、雪渓の涸沢にむかう道すがら群生していた。西日本にはない山菜である。

 天ノ川の小籠山(ホノギはココミ)は、植生分布からみればシダ類でない。とすると宝篋印塔の材料となる粒状石灰岩か。昔、海であった痕跡として小粒の貝が見られるのか。付近のホノギに「ウハス野」があることから姥捨ての山とも考えられる。現地で踏査しなければわからない。

 南国市小籠は、小さな貝がらの意味であろう。同じくコゴミ(香美市香北町五百蔵)、小篭(岡豊町小篭)、コゴミカ谷(四万十市田出ノ川)、下タコゴミ(宿毛市橋上町神有)がある。

 

ございしょのみね(五在所ノ峯)【金上野△黒潮町/標高658.3m】

 

こっとい(男牛)【男牛川(四万十市西土佐橘)、男牛谷(四万十市西土佐江川崎)

 「こっとい」は牡牛の県下全域の土佐方言。畿内・中国・四国地方に広く分布する。特牛(こというし)。車を引く大きな牛の意味もある。四万十市西土佐橘に「男牛川(こっといがわ)」と「女牛川(みょうじがわ)」がそろってあるが、地検帳(幡多郡上の1p613)には「コトイイ谷」、「コトイ谷」、「メウシ谷」となっている。また、「こっとい」はホトトギスの方言として中四国に分布する。

 

こば(コバ)【平野(コバサコ)

 焼畑・切畑をいう九州・四国に広く分布する地名。コバツクリ・コバキリ

こび(古尾)【地吉、コビ山(道徳)、コビガ谷(打井川)、コビ口(昭和)、ウナコビ(地吉)

 民俗地名語彙辞典にはコビの説明に「小さい、狭い土地。コミ(狭間)の転(子生・古井・木尾・小比・古檜)」と鏡味氏の『日本の地名』から引用している。コ(小。接頭語)・ヒであろうが、ヒが日、樋、隙、桧、干、聶の意味によって違ってくる。また、コビソは木曽・伊那では森林中に幼齢木が集団している部分をいう。 

 高知県内では、コビソ(安芸市畑山)、コビツノ(香美市香北町永野)、コビ穴(南国市中谷・大豊町日浦・日高村宮ノ谷)、コビ浦(大豊町小川・)、コビソ(大豊町西峰・土佐市谷地)、コビ谷(いの町清水上分・佐川町加茂・津野町樺ノ川)、コビウラ(いの町下八川丁・越知町鎌井田本村・日高村柱谷)、コビツル(四万十市小西ノ川)など。

こまつおやま(小松尾山)【大正中津川△梼原町/標高850.3m】

 

こみ(コミ・ゴミ・古味・小味・小見)【古味ノ平(日野地)、五味(影野のホノギ)、古味野々集落(大正大奈路)

 古味、小味と書いてコミと訓ませる地名は、山間部の川沿いに多い。水流のよく突き出た屈曲部の称で、水流の入り込む意味のコムという動詞の名詞化であろう(桂井和雄土佐民俗選集②p275)。五味(ゴミ)地名は粒子の細かい砂などが堆積した地名。五味地名に住む場合は、河岸に家を建てないという災害地名でもある。土佐では溝や池にある泥土。ゴにアクセントがあり、ゴミ(塵芥)と区別する(土佐方言辞典) 

こみのの(古味野々)【大正大奈路の集落。飛地】

 

こめのかわ(米の川)【米奥地区の集落・行政区】

 

(20200906現在)


ちめい

■語源

 

■四万十町の採取地

 

 

■町外の採取地