■語源
高知県内には見残、見ノ越、三ノ越、箕ノ越、三野越があるが、ミノコシ本来の意味は不明。ただ地形的にみると小さな尾根を越える小みちのようとある(民俗地名語彙辞典下p369)(土佐民俗選集Ⅱp2580)。
ミノコシで有名なのは、土佐清水市の「見残し海岸」。弘法大師がこの地を見残したと由来を示すが、愛媛県では江戸時代の検地役人が見残して漏れたところと『伊予の地名』も色々説明する。ところ変わればいろいろだが、本来の意味は不明。高知県に136の小字があり、愛媛県にも18か所ある。
電子国土Webで「ミノコシ」を検索すると岡山・広島・愛媛・高知でヒットする地域限定の地名のようだ。地形図は大字や集落の地名であり小字でとなると異なった分布になるかもしれない。小字では、高知県では県西部が多いものの県東部にもあるが、徳島県にはない。愛媛県は全域に分布。ミノコシの意味は不明ではあるが、『伊予の地名』は農具の箕(ミを使ったことのある人は70の自分位の年代までか)はへりが深く弓形に曲がっているので「そういう曲線のところを越していく意味か」と述べる。四万十町の場合まさにそうだ。穿入蛇行する四万十川の最短な鞍部を越えるところが「ミノコシ」だ。
ミノは美濃、三野、美野、見野などの漢字をあてた地名がある。ミは接頭語で美称、ノは(野)の意味。焼畑などに利用する傾斜地が野で平坦地は原である。ミノコシは「愛しいこの地を越えるところ」といったとこか。
不思議なことに飯ノ川地区には「見ノ越」と「美ノ越」のふたつのミノコシがある。
「見ノ越」はどうだろう。美濃のミノについて柳田国男氏は「一方が山地で、わずかな高低のあることを意味した」という。ミノは丘陵地帯の意味という。東又の丘陵地帯の北東端(弘見)から越えるところから「見ノ越」となるのか。
「美ノ越」はどうだろう。この飯ノ川の美ノ越付近はため池が多い。東又の広い農地を潤す水源地にもなっている。日本地名語彙辞典に「大阪に箕面(みのお)の滝があるが『ミノ(水)ヲ(脈)』の意で、滝水が山地から出た所の地」とあるが、ヲは水の尾にもつうじる。「美ノ越」は「ミノヲから上ノ加江へ越すところ」とも読める。
また、峰尾の転訛もある。ミ(水)・ノ(助)・ヲ(峰)で「分水嶺」を意味するか(地名用語語源辞典)。
類似した地名に「コマシ越」がある。県内に11か所の小字があるが県中央部に分布する。香美市香北町岩改字「駒士越」の他はカタカナ表記である。
「コマシ」について、『桂井和雄土佐民俗選集その2』(p121)は「むしろや俵を編む器具のことで、葬式の場合には、これに似たものを青竹でつくる。葬式から帰ったものが、庭にしつらえたコマセをまたぎ、箕から塩を取って祓った。」と述べる。その形状に似た平坦な峠を「コマシ越」と呼ぶのだろうか。このコマシの形状は柱のカンナ掛けなどに使う「ウマ」という四つ足の台がある。その駒の足(コマアシ)が変化してコマシとなったのか。
ミノコシの「箕」もコマシコエの「コマシ」も、その二つの道具を葬儀につかっているところに意味があるのではないか。四万十町内の事例から読みとれば、一定の農地の広がるところから隣の村へ平坦でゆるやかな峠越えをするところではあるが、村境でもある。
20251223胡
